
■■戦争の法■■
『戦争の法』を読む。
分厚いハードカバーの上に、開いてみるとそれはもうぎっちりと文字が詰まっている。
題名も題名なので、持ち歩いていたここ1週間ほど、いろんな人に
「えらい本読んでんな……」
とギョッとされた。
しかし、実際の戦争についての話ではない。完全なフィクションである。
時は冷戦時代、まだソ連があった頃、日本のとある県(N***県と書いてある)が独立宣言をする。
日本人による日本国内の事件であったにも関わらず、そこにはアメリカとソ連の力が確実に働いていた。
そんな状況下のN***県に生まれた中学生の「私」と「千秋」。
二人はやがて中学をドロップアウトし、反独立政権のゲリラに身を投じることになるのだが――。
最初は確かに読みづらかった。
感情的な描写が一切そぎ落とされた、事実だけの硬質な文章。
しかし、いつのまにかそれに引き込まれていた。
「私」と「千秋」の辿る数奇な運命から目が離せなくなった。
佐藤亜紀さんという女性が書いている小説なのだが、とても女性が書いていると思えない。
感覚的な美しい文章も好きだが、こういう硬く鋭い文章も悪くない。
久しぶりに読み応えのある物語に出会った。幸せである。

