
■■裏庭■■
『裏庭』を読む。
ファンタジーである。
カタカナのよくわからない名前の架空の生き物や場所がたくさん出てくる。
にもかかわらず、物語全体がひどく現実的であり、システマティックに構成されている。
ファンタジーだけど安易な夢物語ではない。
伏線はきちんとはってあるし、起承転結もしっかりしている。
そして、主人公の照美がいかにして自分のなかにある傷とかかわっていくかというのが丁寧に書き込まれている。
照美は「裏庭」での冒険を通じて、「いかに傷を克服するか」ではなく「いかに傷と共存するか」を学ぶ。
一度負った傷は、もうもとには戻らない。そこから先は傷と一緒に生きて行くしかない。
けれど、傷とともに生きることは決してネガティブなことではない。
傷を負うことで、人は変わっていく。
賢くなり、強くなり、そして優しくなるのだとこの本は語っているように思う。
「傷」について書かれた本はほんとうにたくさんある。
そこには、実にさまざまな「傷」とのかかわり方が示されている。
しかし、「がんばって傷を克服しよう」みたいな空気が漂っているものがほとんどだ。
その空気が感じられると、それがひどく安直で自分勝手な意見のように思えてなんだかがっかりしてしまう。
傷を負った痛みは、その人にしかわからない。同じ痛みを本当にわかちあうことはできない。
この世界に一個体として生まれた以上、この孤独は避けられない。
けれど、その孤独とともに、素敵に優しく生きて行くことは可能だ。
この本の語る「傷」とのかかわり方は、今まで読んできた本の中で一番私にしっくりとなじんだ。






