2007年02月21日

月魚

月魚
■■月魚■■

三浦しをん『月魚』を読んでいる。
以前2ページほどの掌編を読んだことがあるだけで、長い小説を読むのはこれが初めてだ。
図書館でなんとなく目に留まり、なんとなく借りてきてしまった。
三浦しをんが彼か彼女かもわからないし、今読んでいる作品がこの作家にとってどういう位置づけのものかもわからない。
けれど今こうしてこの作品を読んでいるのはきっと何かの縁なのだろう。

私と本(作家)の出会いはこうした偶然が結構多い。
いちいち前評判を調べたりするのが面倒というのもあるが、むしろこういった偶然の出会いを好きなのだ。

残念ながらその作品が面白くなかった場合、その作家をそれ以上読む気がしなくなる。
しかし、たまたまその作品が作家の得意分野ではなかった、という可能性は残る。
恋愛モノを書かせたらピカイチなのに、あえてアクションにチャレンジしてみた(そして返り討ちにあった)作品かもしれない。
そう考えると偶然に頼るというのも勿体ないところはある。

けれど、それでもいいんじゃないか、とも思う。
私とその作家との間にそれだけの縁しかなかったのだ。
それに私には、出会うべき作家にきちんと出会うことができるという根拠のない自信がある。

三浦しをんはまだ1/5しか読んでいないのでなんともいえないが、なんとなく心をざわざわさせてくれる作家のようだ。
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2007年02月17日

いつかパラソルの下で

いつかパラソルの下で
■■いつかパラソルの下で■■

『いつかパラソルの下で』を読む。
森絵都さんの作品といえば、なんとなく「ピュアな少女」的なイメージがあったのだが、これは違った。

厳格な父、その父に寄り添ってきた母、厳しい父とそりが合わず家を飛び出した兄と姉、そんな兄と姉を反面教師に「良い子」を生きる妹、の5人の家族の物語である。

ある日、父親が突然死んでしまう。
その死は家族に、父親の意外な秘密を運んでくる。

三兄弟は父親の秘密を探り始める。
最初は、真面目に怒りを募らせる妹に、フーテンな兄姉が引っ張られるかたちだったが、父の秘密を探っていくことで、やがてそれぞれが前に向かって進み始める――。

とまあそういった話だが、あまり重い感じはしない。さらっと読める。

本文が三兄弟のなかでもいちばん飄々としている長女の一人称で語られているせいだろうか。
父の秘密を探るにしても、すぐに「まぁいいか」と流されてしまう兄姉にたいして「あたしは諦めないよ」とひとりいきり立つ妹の様子もなんだかおかしい。
(この妹の一途さは『グッドラックららばい』の妹りっちゃんを彷彿とさせる。応援したくなる)

でも私にはその方がしっくりくる。
大切なことこそさらりと語るほうが、きっと、カッコイイと思うのだ。
posted by 飼い主M at 19:45| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月12日

モンスターフルーツの熟れる時

モンスターフルーツの熟れる時
■■モンスターフルーツの熟れる時■■

小林恭二さんという作家がいる。
私のなかで、J・アーヴィング、P・オースターと並ぶ三大巨匠だ。

そんな小林さんの作品『モンスターフルーツの熟れる時』は連作短編集である。
小さな子供がひとり、またひとりとモンスターフルーツという得体の知れない果実に成熟していく。そして世界は――
というような話だったと思う。

実はずいぶん昔に読んだので、詳しい筋は忘れてしまった(←オイ)。
けれど、読んだ直後の気持ちはいまだに鮮明に覚えている。

なんという想像力。そして、なんという創造力。

この本を読む頃にはすでに小林恭二という作家に馴染んでいたはずなのに、それでも読み終わったときは圧倒されていた。

平凡に見えた世界が、そこでひそやかに生まれた小さな存在が、少しずつ、少しずつ変わっていく。
その変化には、それぞれわりときちんと理由がある。合理的だ。にも関わらず、その理の展開する先には見たことのない世界が広がっているのだ。

荒唐無稽な世界へ、理性をもって導く。

これこそまさに小林さんの真骨頂だと思う。
精緻な理論に引き込まれ辿りついた、広大な想像力の世界に、読者はただただ圧倒されるのだ。

こういう才能と同世代に生きられることを、とても、とても幸せに思う。
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2007年02月08日

蛇を踏む

蛇を踏む
■■蛇を踏む■■

川上弘美さんの『蛇を踏む』を読む。
文春文庫から出版されていて、「蛇を踏む」「消える」「惜夜記」の3作品が収録されている。
芥川賞を受賞したから、というわけではないけれど、個人的には「蛇を踏む」が一番よかった。

ヒワ子という女性が、公園で蛇を踏んでしまったところから、この物語は始まる。
「踏まれてしまったからには仕方ありませんね」
そういって、蛇はヒワ子の家に住みついてしまう。
蛇は、ヒワ子の「母」だと名乗り、執拗にヒワ子を蛇の世界へ誘うようになる。
ヒワ子はそんな蛇の世界に魅力を感じているが、彼女のなかの何かが蛇の世界へ行くのを押しとどめている。
あやうい均衡を保ちつつ、ヒワ子と蛇の生活は続くが――。

とまあこういった話で、読んでいるうちにどんどん引き込まれてしまったのだ。
川上弘美さんの物語には、今まで読んだことのない独特の設定とシステムがある。
それらは、この現実世界からすると、とうていありえないコトなのだけれど、不思議と説得力がある。

きっと川上さんの世界と、現実の世界はぎりぎりのところでつながっていて、そのバランスがとてもうまくとれているのだろう。
だからこそ、物語にいきいきした空気が宿るのだ。

ただ、「消える」と「惜夜記」は、話にうまくついていけなかった。川上さんの世界の方が少し大きくなりすぎてしまったような感があった。

「蛇を踏む」は、芥川賞作品としては、珍しいタイプだ。
けれど、現実と物語の抜群のバランスのよさは、賞をもらうのに十分だったのかもしれない。
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2007年02月06日

失われた町

失われた町
■■失われた町■■

『失われた町』を読む。
三崎亜紀氏は、『となり町戦争』に続いて2冊目である。
実は最初に読みたいと思ったのはこの作品であったが、せっかくなのでデビュー作『となり町戦争』から読むことにしたのだ。
ものごとには順番というものがある。
となると、次は『バスジャック』(←2作目)なのではという話になるが、そこはそれ、オトナの事情というやつである(←勝手)。

『失われた町』は、タイトルのとおり、町が失われる話だ。
もう少し正確にいうなら、失われるのは町そのものではなく、そこに住む人々である。

30年に1度、町から人が消滅する。
どの町が失われるのかはわからない。
町の人たちは、わかっていながら、なぜか消滅に抗うことができない。
けれど町はすべてを奪う。とても、とても、理不尽に。
失われるのはそこに住む人だけではない。
失われた町に関わるすべての人から、声を、視力を、記憶を、そして命を奪っていく。

私は人が死ぬ話が苦手だ。
どのように描いたとしても、悲しいに決まっている。
そしてそれはなんというか、ズルイ、と思ってしまうのだ。
「失われる」というのは限りなく死に近い。
だから悲しいに決まっている。泣けるに決まっている。
案の定、何度も泣かされた。

でも私はこの物語が好きだ。
希望を信じる強い心と目的へと向かう揺るぎない意志、
この物語は、絶望の中にありながら、そういうものに溢れている。
結局そのおかげで、さらにたくさん泣かされたのであった。
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2007年02月02日

いしいしんじのごはん日記

いしいしんじのごはん日記
■■いしいしんじのごはん日記■■

『いしいしんじのごはん日記』を読む。

その名の通り、作家いしいしんじさんの日々のごはんが綴られた日記である。
好きな作家の食べ物の話、これはもう読まざるを得ないのである。

実はこの『ごはん日記』、今もWebで公開されている。
だからわざわざ本を買う必要はないのだが、落ち着いて読みたかったので購入してみた。
文字が紙に印刷されていないとうまく頭に入ってこないのである。
仕事の書類にしても、本気で読まなくてはならないものは必ず印刷する。
アナログな人間なのだ。

で、『ごはん日記』(文庫版)。
2001年9月12日(水)から唐突に始まり、2002年12月31日(火)で終わっている。
そのあいだ、三崎という港町に暮らすいしいさんは、かなりの率で魚を食べている。
うるめいわし、めといか、赤むつ(←三崎最強の魚、といしいさんは言う)、かます、いさぎ(←三崎では「いさき」ではなく「いさぎ」というらしい)、その他いろいろ。

私はふだんあまり魚を食べないので、ここに書いた魚がどういう魚でどう料理したらおいしいのか、実はよくわからないのだが、とりあえず「めといか刺し」「かます塩レモン」「いかと里芋の煮物」はぜひ食べてみたいと思った。
posted by 飼い主M at 00:17| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする