2007年10月27日

レインツリーの国

レインツリーの国へようこそ

心の奥に、ずっと大切にしまいこんでいるモノがある。
それは誰かの描いた絵だったり、誰かの奏でた音楽だったり、誰かが書いた物語だったり、さまざまだ。
仮にそれが形のないものであったとしても、心の中では確かな形を持って根付いている。
そういうモノは誰にでもある、と思っている。

けれどソレについて、他人と話すことはとてもむずかしい。
万が一、ソレをめぐる会話で何がしか否定的な意見が出ると、今までの自分の人生を、価値観を否定されたような気持ちになってしまう。
人の考えはそれぞれだし、自分がソレを大切に思う気持ちが揺らぐわけではない。
けれどそれはとても辛いことだ。

とはいえ、心の奥にしまいこんでいる大切なモノが同じ相手にめぐり会うときもある。
この貴重な幸運の前で、人はどうなるのか、どうするのか。

『レインツリーの国』はそこから物語が始まる。

「ひとみ」という女性が「レインツリーの国」というホームページを持っている。
彼女はそのサイトに、心にずっとしまいこんでいたある小説についての話を書く。
それをたまたま「伸」という男性が読むことになる。
「伸」は驚く。なにせ自分もその小説のことが長い間心にひっかかっていたからだ。
誰にも話したことのなかったその小説について、もっと彼女と話したいと思った「伸」は「ひとみ」に思い切ってメールを出すことにした――。

とまあ、ありがちといえばありがちの設定だし、延々とやりとりが続くメールの内容には、正直ムズムズするところもある。だが、恋愛の始まりとは多かれ少なかれムズムズするものだ、とも思う。
たぶん(←弱気)。

しかしここから物語は意外な方向へ向かっていく。
最後はまったく別な観点で、ウウムと考えさせられる。

この本は同じ作家の書く『図書館内乱』のなかに小道具的に登場してくるものらしい。
『図書館戦争』『図書館内乱』『図書館危機』と続く図書館シリーズは有川さんの代表作なので、ある程度内容を分かって『レインツリーの国』を読んでいる人も多いのだろう。

ちなみに私は『図書館戦争』しか読んでいなかったので、この本の内容もまったく知らなかった。
しかしこれで『図書館内乱』を読む楽しみも増えた。なんだか得した気分である。
posted by 飼い主M at 22:11| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする