2007年12月25日

ナラタージュ

Narratage

『ナラタージュ』を読む。

芥川賞候補にもなった作家、島本理生による恋愛小説である。
島本理生作品は今回初めて読んだ。
最後まで静かな雰囲気は壊れることなく、緩やかに、しかし確実に進行する物語は、なんというか、とても切なくて苦しい。
結ばれなかったとしても、時が過ぎたとしても、好きな人というのはもう永遠に好きでいるしかないのだと、この小説は語っているような気がする。
好きになった人のことを忘れることなどできはしない。
ただ、その人への気持ちを抱えて未来を生きていかなくてはならないのだ。
posted by 飼い主M at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月14日

予想外

腹が立ったときは美味しいものを食べるといいかも

近所のスーパーで交通整理をしているおじさんがいる。
そのスーパーはとても安くて、いつも人と車がごったがえしている。
だから真っ黒に日焼けしたそのおじさんは、夏でも冬でもとても忙しそうである。
しかし、マナーの悪い車というのはいるもので、おじさんも日々の苦労が耐えない。

あるとき買い物を終えた私(の車)を車道に出そうとしたおじさんは、道路を走る車に停止を求めて道へ出た。
おじさんが出てきたものだから、その車は止まらざるを得なかったのだが、運転手は止められたことにいたく腹を立てた。
運転手は窓を開け、おじさんに向かって

「なんだオマエ」

というような意味合いのことを怒鳴ったのである。
あぁこんなとき、ムカつくけど謝らなくてはならないんだろうな、タイヘンなお仕事だよな、と思いながら見ていると、おじさんは

「オマエこそなんだ」

といった内容の台詞を叫びながらつかつかと運転席へ詰め寄った。

予想外の出来事に私も驚いたが運転手はもっと驚いたらしく、あわてて窓を閉めてハンドルを握り、何事もなかったかのように前方を見つめる。必死の見ないフリでやり過ごそうとする、その姿はよりどころを失ったチンピラ的で痛ましい。
その後もおじさんはしばらくその車に刺すような視線を送っていたが、ようやく気が済んだらしく、持ち場に戻って、素敵な笑顔とともに私(と車)を車道へ出してくれた。

仕事としてはダメなのかもしれないが、なんだか笑ってしまう。
posted by 飼い主M at 19:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月09日

オウエンのために祈りを

大好きです

『オウエンのために祈りを』私の愛する三大巨匠の一人、J・アーヴィングの作品である。
ちなみにこのブログのタイトル「The World According To...」も、J・アーヴィングの作品『ガープの世界(The World According To Garp)』からいただいている。
アーヴィングの作品は、どれも腰がくだけるほどに好きだが、なかでもこの『オウエンのために祈りを』は読み終えた瞬間、全身にゾワゾワと鳥肌が立った他に類をみない小説である。

5歳児ぐらいの身長、異星人みたいなへんな声、ずば抜けた頭脳を持つオウエンとその友達のジョンの「信仰」と「絆」を巡る長い長い物語である。
人とは違う姿形に生まれたオウエンのゆるぎない「信仰」が、やがて、奇跡を起こす。
ジョンは親友の起こした奇跡を前に、たしかな「神様」の存在を感じるのである。
そしてジョンは祈りつづける。大好きなオウエンのために――。

この小説は、ひとつひとつのエピソードも素敵なのだが(アルマジロのエピソードがとくに好きだ)、すべてはこの最後の圧倒的な奇跡に向かって集約されていく。
この物語に出てくる人々の「宗教」や「信仰」にどうもピンとこないところがあったりして、読み進めるのに苦労したが、とにかくがんばってじっくりと読みきって本当によかった。

『オウエンのために祈りを』は、ほんとうにパーフェクトな小説だ。
なんだかニューヨーク・タイムズの映画評みたいだが、これほど圧倒的に完成された小説を私は読んだことがない。
posted by 飼い主M at 22:40| Comment(4) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月06日

リレキショ

リレキショ

『リレキショ』を読む。

以前からなんとなく目を引くタイトルで気にはなっていたが、近頃ようやく読むことができた。

さて『リレキショ』。
「姉さん」と一緒に暮らす主人公「半沢良」は、深夜のガソリンスタンドでアルバイトを始める。
職場の先輩、加藤さんは「半沢良」に親切に仕事を教えてくれる。
仕事にも慣れてきたころ、「半沢良」はある少女から不思議な手紙をもらう。
「姉さん」と暮らす家には、姉さんの親友である山崎さんが時々遊びにくる。
「半沢良」と「姉さん」、「半沢良」と加藤さん、「半沢良」と少女、「半沢良」と山崎さん、「半沢良」をめぐる人間関係が少しずつできあがっていき、「半沢良」という人間が徐々に形を持ち始める――。

とまあそんな話である。

冒頭から主人公は「半沢良」という名前ではなく「姉さん」とも血縁関係にないらしい、ということがなんとなく察せられ、そしてそのまま「半沢良」は最後までとてもあいまいな存在として描かれている。
物語に明快なオチと解決を求めてしまう私としては、なんとなくがっかりしたのだが、読み終えてしばらくすると「まぁわかんなくてもいいか」とも思えてきた。
シャツにていねいにアイロンをかけてもらった「姉さん」にとっても、夜中に自家製梅酒を一緒に飲んだ山崎さんにとっても、深夜に奇妙な交歓を続ける少女にとっても「半沢良」は確かな存在としてそこに存在する。それでいいのではなないか、という気がしてきたのである。

結局のところ、人は本名や戸籍によってではなく、周囲との関係を築くことで成立する生き物なのかもしれない。
posted by 飼い主M at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする