
玄月『山田太郎と申します』
芥川賞を取った作家、という程度しか知らなかったけれど、題名に惹かれて読んでみることにした。
『山田太郎と申します』は、タイトルどおり「山田太郎」という、得体のしれない男性が登場する短編をいくつか集めたものである。
そのなかでも『虎の習性』という話が劇的に面白くて困った。
とにかく随所で吹出してしまい、公的な場所で読むには甚だ不向きな内容なのである(←公的な場所で読んだ)。
熱狂的タイガースファンの女性が友人(女性)と日本シリーズを観にいく予定だったが、雨で試合が順延したため友人が観戦できなくなり、ピンチヒッターとして友人の友人である山田太郎がやってくる、という話である。
山田太郎は全編を通じて登場し、どの話でもうさんくささと魅力を振りまく愛すべき主人公である。
しかし、この話に限って言えば、残念ながら主役は彼ではなく、相手役であるところの熱狂的タイガースファンの女性である。
とにかく彼女のキレっぷりがすごいのだ。タイミングは突然で脈絡がなく、その様子は嵐のように激しい。
熱狂する、というのは熱く狂うことなのだと彼女を見ていてしみじみ思う。
そんな破天荒な彼女とつきあわされる山田太郎がまたちょっと力が抜けてて良い感じなのである。
まだ半分くらいしか読んでいないが、山田太郎はどうも女性を輝かせる(というか本性を出させる)才能があるらしい。
とぼけた態度でコテコテの関西弁を操る山田太郎の隣で、女性たちはまぶしい程に光を放つのだ。
まあその光が美しいかどうかは別問題ではあるけれど。

