
■■裏庭■■
『裏庭』を読む。
ファンタジーである。
カタカナのよくわからない名前の架空の生き物や場所がたくさん出てくる。
にもかかわらず、物語全体がひどく現実的であり、システマティックに構成されている。
ファンタジーだけど安易な夢物語ではない。
伏線はきちんとはってあるし、起承転結もしっかりしている。
そして、主人公の照美がいかにして自分のなかにある傷とかかわっていくかというのが丁寧に書き込まれている。
照美は「裏庭」での冒険を通じて、「いかに傷を克服するか」ではなく「いかに傷と共存するか」を学ぶ。
一度負った傷は、もうもとには戻らない。そこから先は傷と一緒に生きて行くしかない。
けれど、傷とともに生きることは決してネガティブなことではない。
傷を負うことで、人は変わっていく。
賢くなり、強くなり、そして優しくなるのだとこの本は語っているように思う。
「傷」について書かれた本はほんとうにたくさんある。
そこには、実にさまざまな「傷」とのかかわり方が示されている。
しかし、「がんばって傷を克服しよう」みたいな空気が漂っているものがほとんどだ。
その空気が感じられると、それがひどく安直で自分勝手な意見のように思えてなんだかがっかりしてしまう。
傷を負った痛みは、その人にしかわからない。同じ痛みを本当にわかちあうことはできない。
この世界に一個体として生まれた以上、この孤独は避けられない。
けれど、その孤独とともに、素敵に優しく生きて行くことは可能だ。
この本の語る「傷」とのかかわり方は、今まで読んできた本の中で一番私にしっくりとなじんだ。


梨木さんですね(^◇^)
私も本が好きなのでよく読みますが、早読みというかすっ飛ばし読みタイプなのです。でも、梨木さんと幾人かの方は読むのが勿体無いと思ってしまって、家でゆっくり読んでいます。なんかラッシュでもみくちゃになりながら読むものじゃないような気がして…。
ちなみに私も心の傷は治らないと思っています。時間が経てば痛みは薄れますが、完治しちゃいけないんじゃないかとも思ってます。自分が傷付いたことで他の人には極力同じ思いをさせたくないですから、焼き印みたく残していきます。
巳年ですから、執念深いだけかも知れませんが(苦笑)
コメントありがとうございます!
「早く読みたい」けれど「読むのがもったいない」という気持ち、とてもよくわかります。
私にとって、梨木さんはそういう作家の一人です。
丁寧な文章は丁寧に読みたいですよね。
それで自分の中にある今まで気づかなかった考え(たとえば「傷」について)に気づいたりするのも読書の醍醐味かと思います。
私も今、梨木香歩にはまってます。
「西の魔女が死んだ」から入って、苺をどーたらってエッセイを読み、今は「からくりからくさ」を読んでる最中。
この人の作品に流れる、ナチュラルな雰囲気が大好きです。
梨木香歩さん、いいですよね。
梨木さんといえばやっぱり「西の魔女が死んだ」ですが、「からくりからくさ」もなんかこう穏やかな時間の流れが感じられて好きでした。
たしか「からくりからくさ」と同じ主人公で他にも作品があったような。「りかさん」だったような(←うろおぼえ)。