2007年09月20日

風が強く吹いている

風が強く吹いている

『風が強く吹いている』を読む。

破格の家賃に惹かれて「竹青荘」に集まってきた10人の学生たちが、箱根駅伝を目指す話である。

最初は「竹青荘」住人のひとり、元陸上選手のハイジに乗せられた感のあった住人たちであったが、日々走り続けていくうちに、それぞれに何かを想い、何かに手を伸ばすようになる。
それは自分のこれからの人生だったり、大切な家族や友達のことだったり、走り続ける先に見えるひとりぼっちの美しい世界だったりする。
すべてを走り抜けたとき、彼らは何を想い、何を手に入れるのか。
この物語では、そんな「竹青荘」の住人が、ひとりひとり、とても丁寧に描かれている。

箱根駅伝は10区間を10人の選手が襷をつないでリレーする。
団体競技であるにもかかわらず、各選手はたった一人で20キロもの距離をひた走る。その間、誰も選手に触れることはできない。
走る、というのはひどく孤独な行為だ。けれど、その孤独をつないでゴールを目指す駅伝、そこには確かに強い絆がある。
だから選手は熱があろうと足がつろうとお腹が痛かろうと、必死で前に進み続ける。
だからみんな目が離せない。応援せずにはいられない。

「強くなれ。きみを信じる」

速くなれ、ではなく、強くなれ。
途中、仲間にかけるハイジの言葉は、とても印象的だ。

「竹青荘」の住人たちは、生き方も、価値観も、走るという行為に対する想いも、抱えているものも、バラバラだ。
けれどみんなとても仲がよく、それぞれが魅力的で、いとおしい。
駅伝という苦しくも優しい夢の中、彼らの時間はキラキラと輝きながら過ぎていく。
この時間が、それほどまでに美しく輝いていたことを彼らが知るのはきっとずっと後のことだ。
けれどその光は、彼らの未来を優しく照らし続けることだろう。
人生のなかに、そういう鮮やかで美しい時間があるというのは、とても幸せなことだ。

不運にも同時期に『一瞬の風になれ』という本が出て(←こちらは短距離走が中心のようだ)、それが本屋大賞を受賞してしまったものだから、個人的にどうにもションボリなイメージがついてしまっていたが、そんなことはもうどうでもよくなるくらいに、とても素晴らしい物語であった。

読み終わった後に表紙を見なおし、またしてもじんと来てしまう。
posted by 飼い主M at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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